パネルディスカッション
「自転車活用の可能性」
まちづくり、健康に効果
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「健康長寿社会の実現」
大高 自転車活用による健康増進の面ではいかがですか。
久野 昨年、厚生労働省が日本人の場合、死因の第3位は運動不足であるとのデータを出しています。運動不足を解消すると、健康寿命が延びることに関してはこれまでにいろいろな科学的証拠が出ています。歩くだけでは移動範囲は狭まるので、その面で自転車の活用は効果的です。もう一つは、自転車愛好家ではなく、一般市民が普段の生活を車から自転車に変えること。自治体の計画は、まちづくりだけで行うのではなく、健康部局も入って総合的な政策とすべきです。
運動不足の解消につなぐ
筑波大学大学院人間総合科学研究科教授
久野譜也氏
宮内 自転車運動の特徴は座って行うことで、そのため長時間行うことができます。例えば、サイクリングでは1日に7、8時間平気で走るので、カロリー消費量が非常に大きい。特にスポーツ用自転車は変速機が付いていて、これを活用すると運動負荷を大きく調整できます。ゆっくり走れば運動負荷をほぼゼロまで落とせる道具です。さらに三輪の電動アシスト自転車が出てきて、高齢者のバランスの問題も何年か延長できるかもしれない。自転車運動は生涯スポーツ、レジャーとして、しかも身近で手軽なものとして推奨できます。
 健康効果の上がる走り方ができるかがポイントです。徐行となっている歩道の走行で健康効果があるのか、車道で車を怖がりながら走っていると逆にストレスになるのではないか。自転車を活用した健康効果を議論する前提は、健康に走れる通行帯があることです。さらに自転車は子どもの発達を促すということを強調したい。デンマークでは2~3歳の頃から自転車に親しむようにしています。自転車は運動能力、認知能力、また子どもの自尊心とか、社会性とか、多面的な自己開発にとっていいのだということを掲げて自転車文化をつくっています。
小林 ある自治体では、講習を受ける条件で65歳以上の高齢者に対して電動自転車の購入補助を出しているそうです。電動自転車も、適切に活用すれば、移動の機会を補助するツールになる可能性があります。一方で、道交法では、70歳以上は歩道を走ってもいいといううルールがありますので、速度抑制等の課題も今後考えていかないといけない問題だと考えます。

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